学生の声VOICE

学生と自治体が双方向の協力でWin-Winの関係を築く

艾 尭天(がい・ぎょうてん)さん

環境・社会理工学院 融合理工学系 地球環境共創コース 博士後期課程3年生
参加したワークショップ:2020年春(参加当時 博士1年)

【参加機関担当者】
曽田 暁(そた・さとる)
大田区 産業経済部 産業振興課 産業調整担当係長課長補佐 
企画経営部 企画課、環境清掃部 環境計画課も兼務
東京工業大学 超スマート社会卓越教育院 非常勤講師
超スマート社会卓越教育課程「大田区起業体験オフキャンパスプロジェクト」「大田区起業実践オフキャンパスプロジェクト」[1]を担当

<学生プロフィール>
1996年生まれ、中国出身。2018年中国湖南大学設計芸術学院プロダクトデザイン卒業、2021年千葉大学大学院融合理工学府デザインコース修士課程修了。現在、環境・社会理工学院融合理工学系地球環境共創コース博士後期課程3年生。
<研究テーマ>
地域博物館におけるデジタル記録と展示技術の応用-博物館を出発点とする地域コミュニケーションの再構築-

  • マッチングワークショップ
  • SSS登録生
  • その他

コラボレーションの相手を探すためにSSSマッチングワークショップに参加したが…

曽田 艾さんは、どうしてSSSマッチングワークショップに参加されたのですか?

 参加のきっかけは、指導教員の野原先生にすすめられたことです。ワークショップを通じて、自分の研究とコラボレーションできる相手を探していました。

曽田 艾さんの研究テーマは、地域博物館のデジタル記録と展示デザインですね。

 地域博物館の視点から、地域コミュニケーションの再形成を中心に研究を展開しています。ただ、実際に参加してみると、他の学生たちの研究テーマは5GやAIや機械学習といったものが多く、デザインに関連するのは私一人でした。参加企業も通信系などの会社が多く、自分の研究に合う相手がいないのではないかと感じ、あまり期待はしていませんでした。

新しい技術の導入により地域博物館の新しい価値を作りたい

曽田 私からすると、それが逆に面白いなと思ったんです。お話を伺ってみると、まだ対象フィールドが決まっておらず、研究の方向性もこれからという話だったので、大田区内にあるミュージアムに行ってみませんか、と声を掛けさせてもらいました。その後、龍子記念館[2]とコラボすることになりましたが、一般には入場不可となっているアトリエや旧宅を3Dでデジタル記録したんですよね?

 はい。一眼カメラで撮影した写真から3Dモデルを作る「フォトグラメトリー」という技術を使いました。私はセンサーでスキャンしたデータも使い、手作業で2つのデータを比べて、最終的なデータを作りました。

曽田 変な言い方ですが、本物より本物になっているように感じます。アトリエは85年前の建物のため、耐震性の問題もあって自由に見学できません。3Dのデジタル記録によって、リアルに近いものを自由に見られるようになればお客様にも喜んで頂けると思いますし、区にとってもありがたいですね。

 この成果は、今後一般に公開する予定です。今後は、普通の展示にもデジタル展示を導入することで、博物館内のコミュニケーションが活発化したり効率が上がったり、地域以外の人も集めて、地域博物館の新しい価値を作ったりできたらとても嬉しいと思っています。

SSSマッチングワークショップに参加して

1分間で研究内容を相手に伝える難しさを痛感

曽田  マッチングワークショップに参加されて、いかがでしたか?

 1分間で自分の研究を専門外の方に説明するのは、難しいですね。マッチングワークショップでは、この能力が一番重要だと思います。

曽田 学生さんが先生以外の大人と話す機会はそう多くないですからね。緊張しているのがこちらにも伝わってきましたが、それを経験できるのもマッチングワークショップの大きなメリットではないかと思います。

 例えば研究室で、自己紹介や自分の研究を紹介する5分間のビデオを作ってみるなど、練習するといいと思います。自分をアピールする能力が伸びますよ。

曽田 このコラボは、艾さんからの提案で新しい技術を導入できるなど、大田区としてもメリットを感じています。艾さんとしては博士論文を完成させることが重要ですから、我々はフィールドの提供といったお手伝いをしながら、双方向に協力できるWin-Winの関係になれればと思っています。

[1]
東京工業大学 超スマート社会卓越教育院では、大田区と連携して「大田区起業体験オフキャンパスプロジェクト」「大田区起業実践オフキャンパスプロジェクト」を開講しています。曽田氏は本講義で非常勤講師を務めています。

[2]
大田区立龍子記念館…近代日本画の巨匠と称される川端龍子(1885-1966)によって、文化勲章受章と喜寿とを記念して記念して1963年に設立されました。龍子記念館の向かいの龍子公園には、旧宅とアトリエが保存されています。
 
 

指導教員からのメッセージ

Ai Yaotianさんは、人工物を独自の繊細な目線でとらえた上で3D画像化する技術を持つ学生です。その応用が、見る人にそれまでにはなかった新しい体験を生み出す、そんな仮説も口にしていました。そこへマッチングワークショップを通じて大田区立龍子記念館との出会いがあったことで、その漠然とした研究アイデアに実体を与えていただき、大田区の地域コミュニティという生き生きとした現場にもつながることができました。自分の研究を語ることの大事さも日々教えていただいていると思います。関係者、また事務局のみなさまに感謝しております。意外なコラボレーションの可能性を秘めたマッチングワークショップ、みなさんにお薦めしたいです。
(環境・社会理工学院 融合理工学系 野原 佳代子教授)

参加機関からのメッセージ

まさに一期一会!毎回SSSマッチングワークショップに参加とは言えない大田区が、艾さんと出会うことができたのは、本当に偶然かつラッキーなものでした。これをきっかけに、艾さんには、野原先生はじめ研究室の皆様をご紹介頂き、私も龍子記念館メンバーほか、今後の研究活動や生き方にプラスになりそうな方々を紹介することができました。そこで築かれた多彩な人的ネットワークが、野原研が昨年度主宰された「使い捨てコンタクトレンズの環境問題に関する展示会(略)」など、他PJにも活かされてきており、喜ばしい限りです。艾さんには、博士論文完成に向けてのラストスパートはもちろん、人と人との出会いを大切に、視野の広い人生を歩んでいってもらいたいと思います。
(大田区 曽田氏)

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